カタイキノコ ～萩原朔太郎「春の予感」より～
制作：Paody
絵：Paody
文章：Paody
Copper/七宝
原作：萩原朔太郎「春の感情」
春がくる
別に嬉しいわけでもなく、ただ義務的に
小さな鐘のようなきのこが、落ち葉を押し上げ、打ち鳴らす。
森で空は見えない。
腐った切り株が、ミミズとキノコのたまり場だ。
いつだって、きのこは日陰の悲しみと反骨心。
森の木漏れ日が差し込んだスポットライト
そこには、可憐な花が咲く。
別にうらやましいわけではない。
あいつらは、虫にチヤホヤされて、いい気になっているが
食われることはない。
けれど、私たちキノコの仲間は、人間に見つかれば食われるのだ。
陽のあたるところに出る奴なんて、大した価値はない。
結局、食えない奴らだからさ。
ただ、鼻につく仲間もいる。
私は匂いを出して、人間を誘うこともない。
気取ったあのキノコはフランス産のタバコのような匂い。
匂いを出してアピールしたら、バカを見る。
一方で、感心な仲間もいる。
艶やかなあのキノコは、大した奴らだ。
艶やかなあのキノコは、大した奴らだ。
食われないように毒を持ち、万が一、食われた場合は自爆する。
タダでは死なない英雄だ。
そして、私のことだが
・・・私は匂いもない。毒もない。
・・・私は匂いもない。毒もない。
ただ、ひたすらにカタイのだ。
食われることはない。
匂うこともない。
そして、季節なんて超越しながら生きている。
気まぐれだけど、泣きついた虫たちの雨をしのぐ傘となる。
その時、横目で可憐な花を見下す瞬間が、実に気分がいいものだ。
そんな春が、飽きもせずやってくる。
ラベル
ラベルとは・・・ 空のうたたねは、色々な原作をもとに、作品作りをしています。そこで、作品のジャンルによって、色分けをした印です。