すれ違い、掛け違い、それでもあなたとつながっている ～『伊勢物語』（筒井筒）より～
制作：Paody
絵：Paody
文章：Paody
Silver925
原作：作者不詳『伊勢物語』
近所の公園で、いつの間にか、一緒に遊んでいた。
幼き頃の思い出。
あなたよりも、縄跳びがうまく飛べた。
そんな自慢げな顔をしていたら、スカートにカナブンがとまった。
私は大泣きしたけど、あなたは、慌ててカナブンをとってくれた。
手をつないだことはなかったけど、
手をつないでいるように成長した。
違う高校へ進学したから、
当たり前にいるあなたが、当たり前でないことを知った。
縄跳びを飛んでいた頃は、あなたよりも背が高かった。
縄跳びを飛んでいた頃のように、私の髪は短くない。
変わってゆく私を見て欲しい。
変わってゆくあなたを見ていたい。
幼い頃に出会っていなかったら、
気持ちはすぐに伝えられたかもしれない。
近くにいながら、遠くにいて、
遠くにいて欲しくないから、そばにいたい。
すれ違いに掛け違い、
それでもあなたとつながっている。
伊勢物語（石田穣二訳注）
筒井筒（２３段）より
『伊勢物語』は、平安時代に成立した日本の歌物語（和歌にまつわる説話を集めた物語）。平安時代初期に実在した貴族である在原業平を思わせる男が多く描かれている。ただし、主人公の名は明記されておらず、作者不詳である。現存する日本の歌物語中最古の作品であり、後世への影響力は非常に大きい。日本文化を総覧するためには必読書である。
展示歴 なし
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