花占い ~伊藤左千夫『野菊の墓』より~


制作:Paody
絵:Paody
文章:Paody
Brass
原作:伊藤左千夫『野菊の墓』

早く大人になりたかった。
二人でいるところを、冷やかされたから、これが恋だと知った。
悪いことをしているわけではないのに、なぜか後ろめたかった。
きっと大人になれば、堂々としていられるのだろう。
僕は幼かったから、恋をする自信がなかった。
経済力、他人の目線からの無関心、勇気と忍耐、責任感、
子供心でも、それらが必要であることを知っていた。
だから、早く大人になりたかった。
*
夕暮れに、長い影が二つ。
その先に咲く野菊が、風で揺れていた。
夕暮れが、赤くなった顔を隠してくれたから、
僕は、野菊に向かって「好きだ」と言った。
*
僕らの恋は、花占い。
「好き」か「嫌い」かを、誰かに決められるものではなく、
自分の手でつかむもので、ありたかった。
ラベル
ラベルとは・・・ 空のうたたねは、色々な原作をもとに、作品作りをしています。そこで、作品のジャンルによって、色分けをした印です。