忘却の徒 ～シェークスピア『ハムレット』～
制作：Paody
絵：Paody
文章：Paody
Brass,ゴム
原作：シェークスピア『ハムレット』
心は川のようである。
澄みきった清流。けれど昨日の嵐で茶色く濁る。
怒り狂い、なぎ倒し、轟音を立てた濁流も、
何もなかったかのように、数日後には清流にもどっている。
心は川のようである。
１０年前に流れた水は、今、流れている水とは別もの。
それなのに、川の姿は、変わらないように見えるから、
僕は騙されるのだ。
同じような姿をしている。けれど、すっかり心は変わっている。
心は川のように流れてゆく。
もう２度同じ心は、戻ってこない。
喜びや憎しみを、忘れないように刻みつけても、
結局は、流れていってしまうのだ。
忘却の徒
一輪の赤い花が上流から流れてくる。
時には優雅に、時には鋭く、流れに乗って、ダンスする。
花びらの上の水滴は、彼女が流した涙なのか。
心は川のようである。
同じ水はないけれど、形が似ているから、思い出すのだ。
頬をつたって流した涙が、頭の中で、流れている。
それは清流にも、濁流にも似ている川のようであった。
シェークスピア『ハムレット』（福田恆存訳）
僕は『ハムレット』を忘却についての書としている。
「なすべきことは、思い立ったときに、してしまうにかぎる。その一旦「思い立った」気持ちとやつが、すでに曲者、あてにはならぬのだ」P156
展示歴 なし
ラベル
ラベルとは・・・ 空のうたたねは、色々な原作をもとに、作品作りをしています。そこで、作品のジャンルによって、色分けをした印です。