羅生門 ~芥川龍之介『羅生門』~


制作:Paody
絵:Paody
文章:Paody
Silver925/寛永通宝
原作:芥川龍之介『羅生門』

羅生門の柱に、一匹のヤモリがいた。
音も立てず、グングン進んではピッタと止まる。
月光で門は重たく影を作っている。
門の楼の中には、引き取り手のない死体が転がっているという。
その臭いでハエは集まり、ヤモリがそれを狙っている。
数時間前に、楼の中から、慌てた様子で男が飛び出した。
女の着物を抱えながら、ドタバタと闇の中へと消えていった。
楼の中で何をしていたのだろうか?
一方でヤモリは、ハエの羽を剥ぎ取ることはせず、
そっと気がつかれないように、命とともに奪い去る。
ハエの肉体は、ヤモリの胃袋の中。
生命は、他の生命を喰らって生きるものだ。
いつか自らの生命が消えてしまうことを知っているのに
他の生命の炎を奪い、自らの生命に火をつける。
生命の悲しさとは、このパラドックスにある。
自分の中で燃えている炎は、私のものではなく、他者のものである。
Je sommes d'autres.
きっと、あの男は無意味に生きているだろう。
なぜなら、生きる意味を知ったのだから・・・
ハエの羽をくわえながら、スルスルと闇の中へと消えていった。
ラベル
ラベルとは・・・ 空のうたたねは、色々な原作をもとに、作品作りをしています。そこで、作品のジャンルによって、色分けをした印です。