黒い肺 ~有島武郎『一房の葡萄』より~


制作:Paody
絵:Paody
文章:Paody
K24GP、ぶどう石
原作:有島武郎

横浜に冷たく生ぬるい風が吹く
右頬に罪悪感が吹き付けて、左頬に安心感がなでてゆく
学校からの鉛色の道を、
そんな矛盾した風のせいでバランスを崩してしまいそう
今日、僕は友達のクレヨンを盗みました
盗んだことがバレてしまって、先生のところに突き出されました
大好きな先生に、軽蔑されることが怖かった
ただ、許されることだけを、願っていました
こんな自分勝手な僕だけど、まだ愛されたい
先生は、やさしく僕の膝の上に、一房の葡萄をのせました
黒ずんだ葡萄
それは、僕の黒い肺を見ているようでした
胸の中から僕の黒い肺を引きずり出されたように見えました
卑劣で、みじめな僕
それを許す寛容な友達と先生
許された安心感で、その闇がなかったと勘違いする僕の心が怖かった
僕の心は、ねじられたツタに絡まる黒ずんだ葡萄
そんな僕でも愛されたい
生きていて、ごめんなさい
そんな僕でも
生きていたい
ラベル
ラベルとは・・・ 空のうたたねは、色々な原作をもとに、作品作りをしています。そこで、作品のジャンルによって、色分けをした印です。