阿 ~鴨長明『方丈記』より~


制作:Paody
絵:Paody
文章:Paody
Silver925
原作:鴨長明『方丈記』

養和元年(1181年)
京では大飢饉に見舞われる。
無数の餓死者。
遺体の処理は間に合わず、
街中に遺体が放置された。
山の法師の加持祈祷は効果なく
死にかけの魂が、閻魔様の門の前で列をつくっていた。
ただ、蛆たちは、太っていた。
腐敗する体内のガスで腫れた肉体を、蛆が食い破り、
その穴から漏れたガスが、そのまま魔の風となる。
飢えと病気のため、明日に希望はもてなくて
それでも、仁和寺の一人の法師が
無数の遺体の額に「阿」の文字を書いて、練り歩く。
南無阿弥陀仏
鎮魂をこめた合掌。
生命が尽きた物体に、吹き込む暖かな風。
それは、生きていた意味を、与えるような行為。
「今、君が死んだということを、私が認めた」
「だから、安らかに、天へ」
それは、何も変わらない行為。
生き返るわけでもない。
しかし、それで、人は救われる。
ラベル
ラベルとは・・・ 空のうたたねは、色々な原作をもとに、作品作りをしています。そこで、作品のジャンルによって、色分けをした印です。